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屋根を叩く音
「ウチの両親、親父が定年になってから田舎暮らしを始めましてね」
そう前置きをして、横部君はこんな不思議な話をしてくれた。
横部君のご両親は、ご主人の定年退職を機に東京の自宅を売却し、北関東のはずれに古民家を購入し移り住んだ。いわゆる野中の一軒家で、ご近所さんとは数キロほど離れていたり買い物できるスーパーも遠かったりと、色々不便もあったのだが、豊かな自然と静かな環境をいたく気に入ったご両親は、新天地で夫婦二人仲良く暮らし始めた。
異変を感じたのは、引っ越しして数日経ったころからだった。夜になると、ご両親は『何かが屋根を叩く音』を耳にするようになる。最初は「ネズミかな?」とも思ったが、天井裏を駆けるあの小動物特有な音とは違って
「トントン、トントン」
と、まるで誰かがノックをしているかのような音だった。
屋根裏をのぞいてみるが、静かなものでなんの気配も感じられない。
それじゃあと、家の外から屋根を見上げてみるが、家の裏手は竹林になっていて視界が遮られて、入母屋造りの屋根の全貌はよく見えない。
しばらく放っておくと
「ドンドンドンドン! ドンドンドンドン!」
と、壊れんばかりに激しく叩かれたり、飼い犬が屋根に向かって吠えまくったりなど、奇妙な出来事が続いた。
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