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午前零時。
夜も更けた時刻だというのに、じとりと汗の滲む熱帯夜。
キッチンで一定の距離を保ったままの私たちは、ただいま絶賛膠着状態。
私とあいつが、お互いを睨み合いはじめてからいったいどれくらいの時間が経ったのだろうか。
数十分経過しているようにも感じるし、あるいはわずか数分だったのかもしれない。
交わる視線は熱を孕み、背中をつつと汗が伝うのを感じた。
嗚呼、つい先程シャワーを浴びたのに、と肩を落とす私にあいつはにやりとほくそ笑む。
そんな姿も愛らしいが、余裕の笑みになど屈するものか。
お互い一歩も引かない状態だけれども、機は熟した。
そろそろ決着をつけなければならない。
魅惑的な体つきで私を誘惑するあいつも、やはりこの熱帯夜は幾分かこたえたようで、心做しか、か弱く見える。だがそれがまた効果覿面で、私の視線を先程から捉えて離さないのだ。
(ダメだ。ここで堕ちたら、負け犬だ...)
自分を叱咤激励し、理性と戦う。
欲望に素直になれよ、と自分の中の悪魔が囁く。
いつの間にか、一定を保たれていた距離が、この手をほんの少し伸ばせばあいつに届く距離にまで近づいていた。
柱時計の無機質な時を刻む音。
下がる気配のない室温。
熱を帯びてゆく瞳。
じりじりじり
体温はますます上昇し、ぷつんと理性の糸が切れる音がして、私は勝負に敗北したことを悟った。
「お姉ちゃん、こんな時間にアイス?太るよ」
妹の忠告虚しく、愛しいあいつは私の体内に消えていった。
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