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「正々堂々と生きればいいよ。殺人犯の娘は雇わないって言うような会社はやめてしまえ」
俊介らしい言葉だった。
「お前は加害者の娘で、俺は被害者であり加害者の息子だ。お互い普通じゃない環境で育ってきたんだよ」
──普通じゃない……。
その言葉を聞いて、周囲を見回した。
みんな幸せそうに笑いながら食事をしている。
勉強しながら食事する人、ノートパソコンを広げながらコーヒーを飲む人、泣き叫ぶ子どもをあやしながらポテトを食べさせる人。
「最初からお母さんの子どもとして生まれていたら…私は普通でいられたのかな?」
「ふん…普通の生活を知らないから、俺には分からん」
俊介はそう言うと、温くなったコーヒーをすすった。
自分を守る術…それがなんなのか、今はそれを考えることが優先のようだ───。
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