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「つーか、外暑いな。中入ろう」
道端に立ったままの青年にもう一度視線を向け、その表情を窺った。
頬を赤らめ、眉を吊り上げているその表情を見れば、どういう目で優衣香を見ているのかすぐに分かる。
いずれ送りオオカミになりかねないあの青年に、優衣香を任せることなどできない。
玄関のドアを開けて中に入る時、きっと首にしがみついたままの優衣香と彼の視線は合ったはずだ。
会えない5年間、この二人の間にどんな時間があったのか、俊介は知らない。
「俊ちゃん…おかえりなさい……」
玄関の扉が閉まると同時、また優衣香の腕がきつく巻き付いてくる。
「お前…太っただろ?」
甘えていた優衣香は、その言葉に驚いて、すぐに顔を上げた。
「やだ!降ろして!俊ちゃん、嫌い!」
肩を叩くと、俊介は嬉しそうに笑う。
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