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別に悩みというものでもない気がするんだが…と、思いながら、俊介はから揚げを箸でつまみ上げる。
「まあ…学校前は候補に入れておくか。確か、あの辺に貸店舗もあった気がするし……」
「でも、本当に俊介くんが戻ってきたんだな。5年間…長かったね。ね、ユイちゃん」
英彦が優衣香に声を掛けると、優衣香も嬉しそうに笑う。
「一度くらいは帰ってきてくれるかと思ったけど、一度も帰ってこないんだもん」
少し頬を膨らませながら、それでも笑顔でそう言った優衣香を見て、俊介は苦笑いを浮かべた。
「帰りたくても帰れねーよ。お金貯めなきゃ日本に帰れないし、店がそれほど忙しくないときは別の仕事を掛け持ったりしてたしな。休みが無くて」
できるだけ早く日本に帰ろうと、いろいろ計算して休みの調節なども行った結果、最短の5年で帰ってこれたのだと俊介は言った。
「それなら文句言えないね」
少しでも顔を見たいとは思っても、またアメリカに行ってしまうのなら、一瞬会えた分だけ寂しさは増す。
何の相談もなく、たまに電話を掛けてくるだけの俊介に不満がなかったわけではないが、会えない時間、俊介が何をやっていたのか優衣香は知らない。
そうやって早く帰ってくることを考えてくれていたのなら、それはそれで嬉しい事だった。
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