450人が本棚に入れています
本棚に追加
「順調よ。こないだ病院に行ってきたの。お腹の子も順調に大きくなってるし、この調子なら予定日に生まれるだろうって。万が一の事があったら英彦さんにお願いしようと思ってたけど、この調子なら予定通りに入院できそう」
すっかり大きくなったお腹を撫でながら、小松さんは母親の顔を見せる。
沖縄に来る前は東京で生活していた小松さん夫婦だったが、都会での生活にストレスがあったのか、なかなか子宝に恵まれなかった。
どうしても子どもがほしくて、原因がストレスだと分かったとたん、旦那さんはあっさり有名企業をやめた。
沖縄に越してきてからも仕事が安定しなかったり、島に専門の医療機関がない事を不安に思ったからか、なかなか子どもは授からなかったが、俊介たちがこっちに引っ越してきて一緒にバーベキューをする仲になった頃、妊娠を打ち明けられた。
「隣の家にお医者さんがいると思うと心強いものね」
小松さんはそう言うが、実際英彦はほとんど家にいない。
「ぶっちゃけあの人、産婦人科医じゃないんですけど」
冗談でそう言うと、小松さんが声を上げて笑った。
「医者ってだけで無条件に安心するのよ!専門じゃなくても多少は勉強してるだろうしね!」
毎日島のお年寄りを訪問診療をし、たまに海に出てダイビングを楽しみ、釣り仲間ととれたての貝や魚を食べるのが趣味になった英彦だが、以前よりだいぶ性格が変わった。
最初のコメントを投稿しよう!