未来

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「優衣香」 思わず手を伸ばして優衣香の腕を引っ張っていた。 身体を引き寄せて軽く口づけると、優衣香が目をパチパチさせる。 「お前を誘拐した日を思い出した」 12歳だった優衣香の家庭訪問で家を訪れた時、優衣香は制服の上にエプロンをして夕飯の準備をしていた。 子どもらしさのカケラも無くて、目が離せなくて、守ってやらなきゃいけないと思った。 しかし、優衣香は俊介を見て真顔で答える。 「もう、ホントに時間ヤバいから仕事して。お母さんだってもうすぐ帰って来るよ。ほら、行って行って!」 軽くあしらわれて俊介は少しへこんで見せたが、そんな優衣香の対応も好きだったりする。 「はーい」と、言いながら調理場へと向かった。 沖縄に引っ越してきていろいろ変わった。 取り巻く環境も、時間の流れも、見える世界の色彩も鮮やかになって、毎日が幸せだと思えた。 相変わらず円華や英彦と一緒に住んでいる事を考えると自立しないとな…とも思うが、狭い島の中でわざわざ別居する必要もない。
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