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玄関に行くと3つの大きなビニール袋が置かれていて、円華は腰に手を当てながら顔をしかめていた。
ビニールの袋には大量の野菜とスイカなんかが入っている。
「どこ行ってたの?」
「比嘉さんち。おばあちゃん、話し出したら止まらなくって。ほとんど何言ってるか分からないんだけどね」
方言のせいでご高齢者の言っていることは半分以上理解できないのだが、その辺円華は上手にかわす。
半分も話を聞かないでこれだけ食料をいただいてくるのだから、とんでもない女だな…とも、思うのだが。
「そうそう、これ比嘉さんから。比嘉さん、しばらく鹿児島の病院で入院するんだって。だからコテージの管理お願いしたいって。なんだったら使ってもいいって言ってたんだけど」
円華は鍵をひとつ俊介の手のひらに落とし、ニヤリと笑った。その顔で考えてることはすぐに分かってしまう。
「むしろ姉さん方の方が使いたいんじゃないの?」
「私たちはもうそんなに元気じゃないからいいのよ。あんたたちで使いなさい。その代わり、食事の準備までには帰ってくるのよ」
円華の考えている事など見え透いている。
「OK。今日にでも使うわ」
俊介は鍵をズボンのポケットに仕舞うと、ビニールの袋をいっぺんに3つ持ち上げ、調理場へと戻った。
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