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姉の円華には大学をやめた事は言っていたが、ケーキ屋を始めようと考えていることはまだ相談もしていない。
今回だって、一時的な帰国だと思っている。
5年ぶりの再会……。
「優衣香は?」
俊介が訊くと、円華はニコニコ笑いながら肘で俊介の腕を突いてくる。
「ユイちゃんってば、びっくりするくらいきれいになったわよ。毎日、男の子が家の前までついてくるの」
なんだそれは…と、俊介の顔が歪むと、円華はいたずらな笑みを浮かべた。
「気が気じゃないでしょ?私だって心配だもの」
その顔を見ていると、この人はあの事件をすっかり忘れてしまったんじゃないか…と、思ってしまう。
あれだけ悲惨な事件で息子を失くして、今度は優衣香が変な男に付きまとわれているというのに、笑っている場合だろうか……。
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