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そう呼ぶのは、かつての教え子くらいだ。
振り返れば、見覚えのある顔。
優衣香と同じクラスだった女生徒だった。
「先生…お久しぶりです。こんなところで何やってるんですか?」
まさかこんなところで顔見知りに再会するとは思ってもいなかった。
5年ぶりに帰ってきて、まさか教え子に会うとは……。
「いや…ただ通り掛かっただけだ。懐かしいな…と、思って……」
そう答えると、彼女は俊介の腕を掴んできた。
「また、先生やるんですか?ねえ、先生…あんな事件、誰も気にしてないから、戻ってきてよ」
そんなこと言った時点で、あの事件が若い世代の記憶にもしっかり残っているのだと実感する。
「まあ…考えておくよ。お前も勉強頑張ってな」
彼女の手を振り払う勇気もなく、俊介はゆっくりその手を解きながら、その場を後にした。
結局、優衣香に会う事もできず、ぶらぶらと家に帰り、自宅の前でタバコを吸いながら時間を潰す。
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