再会

9/25
前へ
/412ページ
次へ
「ガッくんなんでも器用にできちゃうからいいけど、私は不器用だから、いつも失敗しちゃうの。だから…別にいいんだ。特別にならなくていいの」 聞き覚えのある声に視線を上げると、あの異質な存在が近付いてくる。 黒く艶めいた髪をなびかせながら、この暑い日にも関わらず、汗ひとつかかずに、涼し気な表情を浮かべてこちらに近付いてくる。 「いつもありがとう。ここまでくれば大丈夫だから……」 ふと、振り返った彼女と目が合った。 「あ……」 言葉を詰まらせた彼女の瞳が、一瞬揺れた。 「優衣香?どうした?…知り合いか?」 男がこちらを見て顔をしかめる。 随分端正な顔立ちの男だった。身長も高いし、ガタイも良い。いかにも運動をしている感じ。 「優衣香?」 黙って立ち止まったままの優衣香の顔を覗き込むその男に、苛立ちを覚えた。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

450人が本棚に入れています
本棚に追加