第一章 幸せってなんだ

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 そう言ってしまえば、汚く思えるかもしれない。しかし、金はあるにこしたことはない。金さえあれば二年に一度の車検や、三ヶ月に一度の固定資産税に怯えることもない。突発的なお祝い金には笑顔の裏で生活費の勘定をし、子供手当が入る月は死ぬほど安堵する。  余所様には見せない部分で苦労を重ねているわけだ。  もう一度言うが、誰かに問われれば「幸せだ」と答える。しかしそれには続きがある。  幸せの形にもステップがあり、常に課題があるもの。俺にとっての課題は金だ。つまり、俺にとっての幸せは、現段階で六五点くらいということになる。  話を戻そう。  ――幸せってなんだ?  俺にとっての満点の幸せというのは一体何なのか、その答えを見いだすことは中々できないだろう。今の俺は人生で一番辛い時期だと言っても過言ではないのだから。  ちょうどきりの良いところで、妻がホットコーヒーを運んできた。淹れたての香ばしい湯気が鼻孔をくすぐる。 「あなた、今日はそのくらいにしておいたら?」  俺はパソコンに視線を向けたまま「あぁ」と適当な相槌をうつと、コーヒーカップの柄に人差し指をかけた。  そのくらいにしておいたら、と言っておいてコーヒーを運んでくるのだから、俺にそんなことを言っても無駄だということがわかっているのだろう。 「なに難しい顔をしているの?」 「ん……ちょうど次の作品のテーマを練っていたところだったんだ。キリの良いところまで出来たし、続きはまた明日にするよ」     
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