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それ以上追及してしまうことが怖くて、広稀はわざと目の前のひかりを睨むようにして凝視する。と、あることに思い当たって、思考がかちゃんと音を立てて切り替わった。
浅田の、利き手とは反対側の手のなかを覗いてみると、それはやはりそのままそこにあった。……それにしても、いつの間に八本もやったんだ、このひと。
「浅田さん」
「んー、何?」
まぶしそうに次々と変化するひかりを見つめながら、──先程、広稀にも勧めてくれたあの『ひかりの色が三段階で変わる』花火だ──彼がのんびりと返事をする。
「……いまごろ気付くのも何なんですけど、この燃え滓はどうするんですか?」
広稀の右手では、今まさに五本目の花火が炎を散らして消えようとしていた。そして、左手には今までやった四本の花火の残滓が握られたまま。
一応、湿った砂に擦り付けて消したものの、やはりこのままではちょっと危ない気がする。かと言って、海にそのまま捨ててしまうのには良心の呵責があった。
……何か、バケツの代わりになるものってないかな。
花火に夢中なのか、答えない浅田はこの際無視して周囲を見渡す。と、瞳に揶揄の色を浮かべた非回答者と目が合った。……何だ、その勝ち誇ったような顔は。
「──さては、きみは『海辺で花火』初心者くんのようだね」
「……確かに初めてです。今までは家の庭か、近所の空き地でしかやったことがないですから」
律儀に応えると、何故か今度は胸を張ってみせる。
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