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そして現実世界で目を覚ました後、僕は影義君と再び出会った。
夢の世界での同行者が、警察である僕に影義君の身寄りを探して欲しいと言って来たのだ。
カフェで眠そうに飲み物を飲む影義君は、
やはり影平とは違って見えた。
口が悪く、素っ気ない振りをしつつ優しく、物事に対し思い切りのいい影平とは対象的に、とても大人しく見えた。
だけど、どうしても影平の姿が重なって見える。僕は同行者の言う通り影義君の身寄りを探しながらも、どこかで彼を家族として迎え入れる事を期待していた。
そして淡い僕の期待通り、影義君の身寄りはなかった。
だから、影義君は僕の家族になった。
母さんに事情を話した所、いそいそと影義君を受け入れる準備をはじめた。
父親が亡くなって以来そのままにしていた書斎を片付け、学習机を準備する。
いらないものを捨て、大事な物は倉庫に片付けた。母さんの中でも止まっていたなにかがようやく動き出したのかもしれない。
必要な物が一通り揃えられたその部屋で
僕と影義君は対峙する。
だけど僕と影義君はほぼ初対面な訳で、
お互いに緊張して固まっていた。
「これから一緒に暮らしいこう。影義君、よろしくね」
僕も他人との距離の詰め方は不器用な方だ。不器用な僕なりに精一杯微笑むと、影義君は頷いてくれた。
影平も、学生の頃は時々家でご飯を食べていく時があった。幼少期から両親にほとんど構ってもらえなかったらしく、母さんの作った料理を食べながら、一瞬だけなんとも言えない表情をしていたのを覚えている。
そして、誰もいない家に帰って行くのだ。
救えなかった、守れなかった。
だけど影義君は僕の家族で、今ここで生きている。
だから、君を幸せにしてみせる。
決して影平の人生を否定するつもりはない。きっと、自分の有りたいように生きたんだと思う。
僕は、僕にできる限りの事を影義君にしたいと思う。それだけだ。
僕が戦う理由が影平の仇を討つことから、
大事な人を守ることに変わったのは
影義君のおかげなんだ。
無力な僕が君のヒーローになれるのは、
もう少し先のお話。
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