後部座席

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ゴルフ場はかなり田舎の方にあったので、帰り道は灯りも少なく、真っ暗な道を彼の車のライトを目印に走りました。 暗くて彼の車の中の様子はよく見えなかったのですが、たぶん後輩の女の子と楽しくおしゃべりしながら運転してたのだと思います。 不思議なことが起きたのは、田舎の開けた道から、高い木の茂る森のような道へと入った時のことです。 それまで暗くて何も見えなかった前の車の後部座席に、何やら青白い靄のようなものが浮かびました。 その青白い靄は、決して強い光を放っているわけではないのですが、暗闇の中でやけにはっきりと見えるのです。 その靄はしばらく真っ暗な後部座席でゆらゆらと形をとどめずに漂っていたのですが、車がどんどん森の奥に進んでいくに連れて、徐々に靄は形を帯び始めました。 そして、後部座席の右側、運転席側で靄はどんどん濃くなっていき、明確な形を成しました。 真っ青な、人の形に。 私は急に全身に寒気がしてきました。 私には霊感のようなものは全くありませんでしたし、そういう経験をしたことも一度もありませんでしたが、何やら異常なことが起こっているという確信がありました。 その靄が現れてからも彼の車は速度を変えることもなく、一定のペースで走り続けています。 もしかしたら彼は気づいていないのかもしれない、そう思い、私はハンズフリーで彼に電話をかけました。 しかし、何度かけてもつながりません。気づかないことはないと思うのですが、折り返しの連絡もありませんでした。 そして、森の終わりが見えてきたあたりで、ふいに暗闇が深まり、前の車のランプも青白い靄も見えなくなりました。 すぐに暗闇は明けて、森を抜けたのですが、私は既に彼の車を見失っていました。 このあたりは一本道で見失うはずもないのですが、なぜか見失ってしまったのです。
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