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わたしはかわいい。
そう認識したのは、物心がつく頃――小学校低学年の時だったと思う。
「ねねちゃんは、とっても可愛いね」
両親や親戚、ご近所様も、すれ違うだけの人も、わたしを見る度、この容姿を褒めてくる。
ふわふわの栗毛に、小顔に収まる大きな猫目。鼻筋はすっと通って、形の良い口唇はまるで桜の花びらのよう。綺麗に配分されたわたしの顔の部品は、どうやらみんなの美的感覚を満足させるものだったようだ。
学校の男子たちは「このブス!」なんて言いながらも、顔を真っ赤にして、事ある毎にわたしにちょっかいをかけてきた。
気を引きたいんだろうな、と幼心に少し達観した気持ちにもなっていたわたしは、そんな時、小首をかしげ悲しそうに瞳を潤ませる。そんな可憐な仕草に、真っ赤な顔のまま気まずそうに逃げていく男子。あはは、ちょろいなぁ。
わたし、音々子はかわいい。
わたしは、そういう星の下に生まれついた。
「ね、わたしってかわいいかな」
「うん、ねねちゃんはとっても可愛いよ」
幼稚園でバラ組だった時から、ずっと一緒にいる幼馴染の雅彦くん。まぁくん。
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