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わたしはまぁくんの腕をつかみ、近所の小さな公園に引っ張っていった。
幼稚園のころ、ここでよく遊んだっけ。わたしに意地悪する悪ガキをまぁくんは必死に追い払ってたっけ。
時にはいじめっ子の逆襲をくらって泣いていたけど、まぁくんの目には強い意志があった。自分は「お姫様を守る騎士」という自負がみえた。
「ここ、覚えてる?」
「よく遊んだよな。ここ通る度に昔のこと思い出してるよ」
「まぁくん、ここで初めて誓ってくれたっけ。『ねねちゃんは僕が守る』って」
「……そう、だっけ」
「うん、そう。それとね、ここは、わたしとまぁくんが初めてキスした場所」
まぁくんを下から上目遣いに覗き込むと、彼は恥ずかしそうに口元に手をあてそっぽを向いた。
そんな彼に、わたしは一歩踏み込む。彼がそれに合わせて一歩退いたが、それを咎めるようにわたしは彼の胴に腕を回した。彼の胸の中で述懐する。
「音々子?」
「もう、今日みたいなことは起きないよ。ううん、起こさない。わたし、もう誰とも付き合わない」
「……は?」
ううん、違う。
「まぁくんとだけ、付き合いたい」
「音々子。一体、なにを」
「まぁくんが好き。わたし、ずっとまぁくんだけを好きだったみたい。今日、やっとそれに気付いた」
「……」
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