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『それって、わたしがかわいいから?』
『ち、違うよ。ねねちゃんは可愛いけど、それだけじゃなくて。ねねちゃんが、ねねちゃんだから』
『ふぅん?』
「う…うぅ……うあぁぁ…ごめん…ごめんね、まぁ、くん……わぁぁぁぁん」
わたしの瞳から涙が溢れてくる。留まることを知らないように頬を伝い、そのまま公園の土へと吸収されていく。
わたしは――馬鹿だ。
まぁくんは、ちゃんと、言っていた。
わたしがかわいいからじゃなくって、わたしが「ねねちゃん」だから守るんだって。
中学の時のわたしはちゃんと「ねねちゃん」でいられた。
まぁくんだけのお姫様でいてあげられた。その時に繋いだ手の感触を、わたしはまだ覚えてる。
まぁくんが雅彦に、ねねちゃんが音々子に変わったのは、いつだったんだろう。
わたしは涙を止め処無く流しながら、嗚咽を上げながら、両手を上げた。
モデルの仕事で買い上げたニットワンピースの薄汚れた袖を見て、その先の伸ばされた両手の細長い指に嵌まるおしゃれなリングを見て――
――そして、その両手で流行のゆるふわカールの髪を掻きむしる。
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