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【始まり】
ここは商人の町。
町の至る所に商家が並び、町外からも商人たちが集まる。
その町の、僕の生まれ育った家は、港の近くにある。
今日も高く澄んだ青空は清々しく、波の揺らぐ音とカモメの声が聞こえる。
父は豪腕の船乗りで、2年程前に
船を買った。
僕にも船乗りになって、跡を継がせたがってる。自分で船を持ってから、そのやる気が強まってるのが…僕は重くて、辛い。
僕には、父のような逞しさは無いし。
体を使って戦うとか、働くとか、やりたくない。
…商人になりたいんだ。
幼い頃に立派な商船を見てから、ずっと憧れてる。
このことを言い出せないまま、学校も卒業してしまったし。先日、二十歳になった。早く仕事を探さないと……船に乗せられてしまう。
昨夜の、父が母に話していたことが、頭の中でリピートした…「仕事が入った、明後日の朝に出港だ。今度は西の街に物を届けてくる。そこなら近いし、エドワイズを連れて行くよ。」
母は僕の成長を喜び、「小さい頃から船が好きだったものね。」と、嬉しそうだった。
父のその話を聞いた(正確には聞こえた)瞬間は、あまりの衝撃に怒りすら沸かず。父の言葉と、葉巻を燻らせる匂いが、僕の脳裏に刻まれた。
…勝手に決めるなよ……と思うけど、別の道を選ぶとは言えず。可能なら、逃げたい。……はぁ。
そう思って、宛もなく、町をふらついた。
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