0人が本棚に入れています
本棚に追加
「おーい、無事かー?」
ライアンさんの声だ。良かった、置いて行かれなくて。
うねる枝の合間から離れて、草地で手を振った。
「此処です。無事です。」
3人と合流できて良かった。
ヴァイスハイトさんも地面に擦った軽い傷だけということで、本当に良かった。…あれ?嬉しくなさそうな表情。
「………鷲の爪が刺さって破れたリュックから、殆どの食料が落ちてしまいました。」
え―――!!!
僕は、心の中で絶叫した。
これは死活問題だ!でも、騒いじゃいけない。クールな装い、大人の男だ。
「顔色悪いわよ……エドワイズ、大丈夫?」
「え?あ…大丈夫です。」
「食料なら心配いらないわ。その辺で調達すればいいの。はい。」と、リェンさんは僕に冊子を見せて、
「またはぐれた時のために持ってなさい。」と、強引に握らされた。
冊子は、食用野草の特徴に調理方法も…間違えやすい毒草のことなどが書かれていて、便利で有難い。
「これはフル活用しそうです。ありがとうございます。」
ライアンさんが少し上を見回しながら言った。
「よーし!それじゃ、立て直しだな。」
「ですね。」と言って、ヴァイスハイトさんは胸元から、使い込まれた地図を出して開いた。
方位計と照らし合わせて、地図の向きを調整しながら、話し出した。いつものように落ち着いてるけど、いつもより早口だ。
「鷲に追われて、目的地から遠ざかりましたね……少し西に来てます。
西のルートで進めば、遠回りになりますが、モンスターの狂暴度は弱まります。
更に遠回りになりますが、分かれ道から海沿いを歩けば、小さな漁村があります。」
ライアンさんとリェンさんの表情を見ようと地図から顔を上げて、2人が周囲を警戒しながら説明を聞いてたのを知った。
慌てて僕も周囲を見張って、胸の内で反省した。
ルートは決まらず……
戻らないことだけは全員一致して、とりあえず分かれ道まで進むことになった。
最初のコメントを投稿しよう!