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【出発】
帰宅して。
港での余韻に浸るとか、座って休むという暇はなく。
ざっくりと、一通り荷物を確認した。
朝ご飯を食べて、母とお茶を飲んで、束の間の あずましさ。
約束の時間までは、あと少し。
「そろそろ行かなくちゃ。」
「それじゃ、送るわ。」
「えっ、いいよ。もう大人の扱いで。」
「何を言ってるの。父さんだって見送りしたじゃない。」
「…うん。」
待合せの場所には、もう 3人の姿が見える。
約束時間より早く来たのに……。
「すみません、待たせてしまいまして。」
「私達が勝手に待ってるだけよ。…宿屋の時計が進んでたの。」
「危ないところでしたよ。宿を出る前に、腕時計の時刻がズレてないか確認した時に、他の泊まり客が『宿の時計は進んでるよ』って教えてくれたんです。
知らないまま ここに来て、エドワイズさんが遅れたと勘違いしなくて良かったですよ。」
「最悪、置いて行ってたかもな。」
「えっ!」…ライアンさんの言葉に、背中に変な汗が流れた。
歩くのが遅かったら、置いて行かれたりしないだろうか……。
「時間が少し早いのは分かりましたが、みんな支度が終わっていたので、そのまま早めに宿を出て来たんです。
エドワイズさんも早めに来てくれたので、ほとんど待たずに済んだんですよ。」
優しい。ヴァイスハイトさんの笑顔や雰囲気に、これからの旅先でも救われそうだ。
3人に、母は「ふつつかな息子ですが、よろしくお願いします。」などと、丁寧にあいさつをして、干し肉の入った包みを渡した。
会話が一段落したら、母に見送られ、初めての旅へと出発した。
こういうのを冒険と呼ぶんだろうか?……ワクワクより不安だらけだ。
僕の旅の目標、次の町。
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