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その母。
いずれ重ねて記すことになるが、わしの酒の飲み方が おかしくなった頃──朝昼晩、時間に関係なく飲み続けていた頃──でも、決して酒を止めろ、とは言わなかった。
子どもの頃から母は(いや、父もだが)わしがやりたいと言ったことは、余程のことがない限りやらせてくれた。
酒に溺れて ぐでんぐでんになっていたわしに、ある時ボソリとつぶやいたことが今でも忘れられない。
『好きなことを止めることや、出来ないことは辛いね。だから私は あなたにお酒を止めろとは言わない。
本当は止めて欲しいけど、大好きなお酒を止めろとは言わないから、飲む量や時間を考えて、減らしてね』
きっと母は何かやりたいことがあったけれど、おそらく経済的な理由から出来なかったのだろうな、と思う。
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