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……?なんだ?
マクちゃん先輩が一瞬考え込んだのにひっかかるが、なんかこれ以上言及していい雰囲気じゃないので視線を手元のステーキに戻した。
流石引き際の相川である。
ナイフが抵抗なくステーキに沈んでいく。
そこから肉汁が溢れ出し、肉の表面を伝って鉄板に落ちた。
肉汁が落ちた鉄板からは喜んでいるかのようにジュー、という音が鳴る。
金持ちは毎日こんなもの食べてるのか。
まぁ周の飯も負けないぐらい上手いけど。今度ステーキ頼もうかな。
しばらく黙って俺の事を見つめていたマクちゃん先輩は思い出したように「あ、」と言った。
「そういえば、今日神楽と出かけるんだって?」
「えっ!?……あー、マクちゃん先輩なんで知ってんの?」
「ふふ、大丈夫大丈夫、ほかの風紀委員には誤魔化してあるから。」
「そりゃどーもアリガトウゴザイマス……。」
そう、今日がかぐらちゃん先輩の1日奴隷……もとい、仲良くお出かけである。
相手がかぐらちゃんなのが癪だが、外なんてなかなか出る機会もないから実は割と楽しみにしてきた。
イベントの報酬と言っても、突発的なものだったし、そもそも生徒会と風紀委員会の対立が激しい学校で風紀委員副委員長である俺が生徒会長と仲良くお出かけなんてよく思われないだろう。
ちなみに鬼ごっこでの命令権の内容は報告義務があったので、迷った挙句「3回まわってワン」をしたと報告しておいた。
まぁなんかそんな感じだったしいいでしょ。
正直、情報網お化けのマクちゃん先輩に今日のことを隠し通せるとは思っていなかったけどね。
他の風紀委員……特にジンヤー先輩に言わないでいてくれるならこちらとしても好都合である。
その後、近況など他愛もない話をしながらステーキを食べ終えた俺はマクちゃん先輩と別れて一旦寮に向かうべく食堂を出た。
やはり朝からステーキはきつかったかもしれないと、多少の気持ち悪さに腹をさする。
そういえば待ち合わせ場所など特に聞いてないしかぐらちゃん先輩の連絡先も知らないな。
なんというルーズさ。
……もしやこれは後輩である俺が前もって聞いとくのが社会のルールってやつか?
まぁかぐらちゃんだしいいか。
準備が出来たら生徒会室にでも行ってみるか、とぼんやり考えていると曲がり角から飛び出してきた何かが目前に迫ってきた。
「ひょ!?」
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