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「国江くんが?ぁはは、ほんとに勉強会したんだ」
時刻は午前のおおよそ7時30分。
聞きなれた優しげな声が面白可笑しそうに言った。
大きな声ではないのに朝食時の人が多い食堂でもよく通る、不思議な声だ。好き。
「やっぱり面白半分で言ったんだ、マクちゃん先輩……。」
俺は昨日包帯から解放されたばかりの両腕でステーキを切り分けながらくすくすと可愛らしく笑う当人を呆れ顔で見つめる。
全く、ほんとにこの人は困った人ね……まぁ、そんなとこも小悪魔で好きだけど。
あれから無事中間考査も終わり、短期休暇中である。
俺はマクちゃん先輩に、いつかの約束で学校一高い昼を奢ってもらっていた。
朝からステーキなんて胃に悪いこと普段ならしないが、マクちゃん先輩は多忙らしく合う時間があまりないのだから仕方ない。
それにしても、食堂でこんなに立派なステーキが出るなんてさすが金持ちである。
ステーキなんて硬いし口に残るし言うほど好きじゃなかったんだけど、やっぱり高いのって違うんだね。俺の中で革命が起きたわ。
ステーキってめっちゃやらかい。
具体的にどのくらいやわらかいかというと、オカゲンが上原を見つめている時の表情……いや、コバが……うーん、
あれだ、寮のソファぐらいやわらかい。それで行こう。
悔しいことにまだ上原の総受け計画は始まったばかりである。
しかし、いつか上原への攻めたちの視線を、特別甘く柔らかいものにしてみせる!!!
マクちゃん先輩は、一生懸命ステーキを切り分けて口に運ぶ俺を見て優しく微笑みながらゆっくりと頬杖をついた。
「ふふ、ごめんね永。でも仲良くなれたでしょ?」
「荒治療ってやつですか?国江くんめちゃくちゃストレスって顔してましたよ。俺の心臓もHPも真っ赤っかですよ。」
えーん、とわざとらしく泣くジェスチャーをする俺を、これまた面白そうにコロコロと笑うマクちゃん先輩。
ぐぬぬ、結構大変だったのに、ほんとにこの人は悪いと思ってんですかねぇ?
楽しそうなマクちゃん先輩は可愛いけど、なんだかんだ大変だったので少し悔しくなって大袈裟なアクションをとりながら言葉を続けた。
「全くもーほんとに、初日とか結構険悪だったんですからね。国江くんともっと険悪なことになってたらどうしてたんですか?」
「初日?……へぇ、ほんとに仲良くなったんだね。」
「え?んー、まぁ話してくれるようにはなりましたけど……。」
「そっかそっか。」
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