都会の小さなマーメイド

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「昔、それは昔、綺麗なそれは綺麗な人魚がこの海で悠遊と泳ぎ、海の生き物達と一緒に暮らしていました。泳ぐその姿はまるで演舞のように華麗で、上品で、長い自慢の銀に輝く鰭をなびかせ、ゆっくりゆっくりと…綺麗な歌声で海の生き物達までも魅了していたの。 人魚によって鱗や鰭の色はそれぞれ違うのよ、太陽の様に黄色く光る鱗をもつ人魚もいれば海の様に青く光る人魚もいるのよ、生きた宝石なの。不思議ね…」 ふふっと笑うお婆ちゃんのこの笑顔が私はたまらなく好きだ。何度聞いても飽き足りない。高鳴り始めた胸の鼓動に、顔をじっと見つめていると話の続きを話しはじめてくれた。 …… ………… ある日の事、暗い夜の海中でふと海面を見上げると一つの明るい光がみえたような、それは月光でもなければ流れ星でもない、ただ一つの光りだったとか…その人魚は引き寄せられるように水上へと向かった。 パッッ。 海面へちょこんと顔を覗かせると、そこには色とりどりの火花が散る瞬間だった。 ドンッッッ!! 心臓に響く大きな音のあとに続くようにパッと咲き散る火花を目の当たりに、空いた口が塞がらなかったそうな。 ドーンッッ、ドドーン!! 水中では聞いた事のないその音に、人魚は身震いし、逃げるようにまた水中へ潜ると海面をもう一度静かに見上げた。
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