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この子の欠落とは、つまり、そういうもの。
そのために、こんなふうに、『性欲』『肉欲』『色欲』の化物、みたいになってしまって。
その化物は、すでに亡骸となって、いまは私の足元に、転がっているだけだけれど。
唇の端から滴る血の緋色、厚塗りのルージュよりも、艶やかで、綺麗みたいよ?
見開かれたままの二個の目で、男の子に色目を使うことも、もう二度と、出来ないね。
その胸元に、垂直に立っているーー小振りのメス。
半月の月光に煌いているそれを、もしも、気まぐれに引き抜いたとしても。
お父様の言うには。
私には、七人の姉妹がいるーーと。
お父様は、賢くて、優しくてーーそう、まるで、神様むたいなひと。
いいえ。
きっと、人間を演じている、神様そのもの。
そのひとは、そして、神様らしく、人間の生命について?その発生?その成長?について?その研究を、お仕事にしていて。
より良い人間を、造るためーーと、そのひとはいつも、口癖のように。
たとえば、そう、私を含む、八人の姉妹。
それもまた、そのひとの手によって、人工の子宮から生まれたのだそう。
たしかーーそう、一個の受精卵を、均等に、八個に分割して、八本の容器で培養して?
けれど、お父様の言うには。
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