物が無くなる家

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後日、地元でお祓いをしてくれる神社を見つけ、Aさん夫婦は依頼の手続きをした。 家に訪れた神主さんは、中へ入るなり表情を曇らせ真っ直ぐに庭へ通じるベランダへと移動していった。 そうして、庭の隅を指差すと 「あそこ、犬がいますね」 と静かな声で呟いた。 「昔この家で飼われていたペットでしょう。亡くなった後、庭に埋められてそのままになっています。悪戯をしていたのも、その犬の霊で間違いありません。…………ベランダの下をご覧になってみてください」 そう言われ、Aさんと旦那は慌てたようにサンダルを履いて庭へ下りると、そのまましゃがみ込み縁の下を覗き込んだ。 「――あ!」 小さな格子のはまった家の下に、これまでに無くなった物が乱雑に転がっているのを発見した。 床下になど、昆虫ならまだしも人間はおろか犬猫だって入り込む隙間はない。 にも関わらず、そこに無くした小物類が集められている光景に、Aさんたちは言葉を失った。
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