この物語はフィクションです。

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この物語はフィクションです。

 僕に耳はない。  理由は知らない。  だけどない。  きっと神さまが僕に耳は必要ないと思ったのだろう。  だから、耳はない。  僕は薄暗い道を今日は歩く。 「みみをくれ」  そんな声が聞こえる。  だけど僕に耳はない。 「おなかがすいた。  みみをくれ」  うるさいな。  僕はそう思った。 「みみをくれ!」  おじいさんだった。  僕はそのおじいさんと目が合う。 「みみをくれ!!」  無性に腹が立つ。  なので僕は僕のコレクションをひとつわけてあげることにした。 「みみを!」  おじいさんの声がやがて恐怖の絶叫へと変わる。 「みみ!!」  僕は、それをおじいさんにあげた。  僕がコレクションをあげるなんて珍しいんだよ。  でも、あまりにも奇遇だったから。  この耳の持ち主は「未実(みみ)」って名前の綺麗な女の子。  性格も良かった。  でも、僕は気に喰わなかった。  髪の毛が長いんだけど。  耳を隠しているんだ。  そしたらさ、思うじゃない?  隠すのならその耳いらなくない?  いらないのなら……   僕に頂戴って!  だからさ……  耳をとっちゃった。 「アンタ、未実に……  どうしてこんなことを」 「僕は悪くない。  何も悪くない。     
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