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「おいおい、失敬だな。妖の全部が全部、人に危害を加えると思ってんの? まぁ、そういうことが好きな奴も中にはいるけどさ。人が他の種族を愛でたり育てたりするようにさ」
口でモゴモゴしていたものをゴクリと飲み込む。
「共存してるんだよ。知らないとこでね」
共存ねぇ。ローストビーフでかいわれを包み口に放り込む。
「で?」
「え?」
「なんでお前はオレの素性にそんな詳しいわけ?」
春海の手と口が止まる。オレは自慢の唐揚げを取る。
「えっと、それはお前の幼馴染みだからじゃダメ?」
「幼馴染みが、なぜ自分すら知らぬことを知っているのか聞いたわけだが」
失敬だなって言ったよな、さっき。
「まさか、春海に隠し事されてるとはな……」
流れるように斜め右下を見る。好物の唐揚げから目を背けるように。
「うーー」
困ってる困ってる。
「降参!」
春海が叫んで立ち上がる。
行儀、良くないぞ。
「オレ、狼男なんだわ」
「……狼?」
化けてんの?
まぁいいから座れとジェスチャーする。自分でも、意外に冷静だな自分、と思う。
てっきり同じ鬼かと思ったが、狼とは。よく漫画やアニメである光景を頭に浮かべる。
「ぼふん、とか言って耳とか尻尾とか出せねぇの?」
「うむ、それは高度な化け形だから、めんどくさい。可愛いからとかそんなのは無視だ!」
そしてまた食べ始める。
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