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十六年、レキって奴は失った悲しみでいっぱいなのか。
こんな状態で後妻を迎えられるのか? 異母妹が生まれるのか?
なんだかそこに物凄い歪みがみえた気がする。
「あれをいいように操ってる茨木童子は別のとこで足止めさせてる。だが、あんなんでも近付くものは滅するって感じだから、これ以上近付くなよ」
いや、もう全くもってそんな気が起きない。今すぐこの場から去りたいくらい。本能的に拒絶反応が出ている。相手は正気ではないながらも三大悪妖怪のひとりに名を連ねる存在だ。
それでも、なぜだか放って置けないと心は疼く。哀愁漂う猫背に子心だか、母性本能だかを擽られるのだろうか。
「生きてるとは言い難い姿だな」
オレへの怨みと暦を失った哀しみだけで生きているのかもしれない。
でも、もうそんなことやめよう。
「セツ!」
春海が静止の声を掛けるが聞き入れるつもりはない。
ここに来たのは、ただ単に春海を迎えに来たわけじゃない。不毛な戦いを終わらせたいと思ったからだ。
話し合うことが出来ればとも思ったが、それは今の状態の彼には無理からぬことだろうし、春海を傷付けたのは許せない。
祓いの技は一、二度程しか繰り出せないが、それでも眠気覚ましくらいにはなるだろう。
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