八.菜虫化蝶

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 気を溜め始めると、いつも以上に集まりがいい感じがする。妖界だと違うのだろうか。 「おまえ!」  レキがいきなりくわっと目を見開き、がばりと項垂れていた頭を起こす。 「うわっ」  自分の意志では動かなそうな様子だったのに、まるでゲームの中でプレイヤーが前を通ると襲ってくるゾンビのように、急に動き出した。  見開いて血走った目はオレを見ている。いや、オレしか見えていない。  十六年逢ってないのに、オレが誰だかわかるのか。 「お前が! お前がぁ!!」  長い間開いてなかった口から、尖った歯がグロテスクな程剥き出され、枯れた声が飛び出す。  そして声と同時にレキの身体もこっちに飛び掛かってくる! 「おおおおお!!!」  早い!  鋭い爪が我が身に襲い掛かろうとしている。  自分は身構えるしかないし、負傷している春海は間に合わない。 「セツ!!!!」  オレを助けようとして転けた春海の縋るような叫びに、自分も鬼であったことを思い出す。  でも、どうやれば鬼になれるんだっけ。 鬼になるまいなるまいと意識していたばかりに、わからなくなってしまった。本来は意識せずともなれたもの、寧ろ止められない本能的なもののはずなのに。  テンパってしまってもうダメだ。  "ダメ" 「え?」  自分の中で誰かとハモった。     
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