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気を溜め始めると、いつも以上に集まりがいい感じがする。妖界だと違うのだろうか。
「おまえ!」
レキがいきなりくわっと目を見開き、がばりと項垂れていた頭を起こす。
「うわっ」
自分の意志では動かなそうな様子だったのに、まるでゲームの中でプレイヤーが前を通ると襲ってくるゾンビのように、急に動き出した。
見開いて血走った目はオレを見ている。いや、オレしか見えていない。
十六年逢ってないのに、オレが誰だかわかるのか。
「お前が! お前がぁ!!」
長い間開いてなかった口から、尖った歯がグロテスクな程剥き出され、枯れた声が飛び出す。
そして声と同時にレキの身体もこっちに飛び掛かってくる!
「おおおおお!!!」
早い!
鋭い爪が我が身に襲い掛かろうとしている。
自分は身構えるしかないし、負傷している春海は間に合わない。
「セツ!!!!」
オレを助けようとして転けた春海の縋るような叫びに、自分も鬼であったことを思い出す。
でも、どうやれば鬼になれるんだっけ。
鬼になるまいなるまいと意識していたばかりに、わからなくなってしまった。本来は意識せずともなれたもの、寧ろ止められない本能的なもののはずなのに。
テンパってしまってもうダメだ。
"ダメ"
「え?」
自分の中で誰かとハモった。
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