9人が本棚に入れています
本棚に追加
これが、セツを護るためだったのか、鬼から解放されたいがためだったのか。どちらが先行したのかは、タマゴかニワトリかの論争と同じで、ただどちらのためでもあるのだと思ってやってきた。
きっと彼はそれを非情だとはいわないだろう。護られていることに少なからず違和感を感じていたようだったし、妖も区別せずに情を抱いてくれていた。
それでも彼をこれ以上このいざこざの渦中に留めておくことはよしとしたくない。
このまま多種族の代表となって鬼たちと争い続けるよりは、安全で平穏な人間の世界で生きていてほしい。
それが彼を利用してこの地までいざなったオレが望むのは烏滸がましいかもしれないが、それでも帰してやる責任はあるはずだ。
力添えしてくれていた閏たちも、向こうを整理してこちらに戻ってくる手筈を取っている。丙とかいう祓師は少し邪魔だが、全く人間界に妖がいなくなることはないので、セツを護ってはくれるだろう。清明についても状況を察して、きっとセツの支えとなってくれる。
レキも漸く目を覚ましてくれたようだし、今後茨木童子の操り人形となることはないだろう。そうなればブラウンズヴィル・オーガは統率のとれたものとなってくれるはずだ。今の彼らはどうも血の気が多すぎる。
背後から殺気を感じる。
振り返ると、鬼たちがまさに鬼の形相で迫ってきていた。
「よくもレキ様を!」
「死ね、狼!」
最初のコメントを投稿しよう!