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こうなることも読めていた。
だがレキと対峙し足を負傷した今の状態では、彼らの攻撃を避けるのは難しい。丘の麓にいる仲間たちが助けにここまで来る頃にはもう遅いだろう。
でももういいんだ。暦との約束は果たせたはずだから。
すべてを受け入れるために目を閉じる。
ふと暖かな風となんだか自分の好きな匂いがふわりと香った気がした。
「ホントだな。向かうべき場所を知っていれば迷わない」
居るはずのない人の声がして、もう開くことはないと考えた目を再び開ける。
帰したばかりのセツが鬼の姿でそこにいた。
背中にはいつか彼が望んだ漆黒の羽が生えている。
襲い来る純血の鬼たちに一切劣ることのない立派な姿だった。
「セツ……」
「帰る方法教えてくれたから、まだ隠し事があったことはチャラにしてやるよ」
紅蓮の瞳が燃えるように滾り、口元には余裕そうな笑みが浮かんでいる。
彼が右手を軽く前に伸ばすと、自分たちの周りを円状に囲む炎の壁が形成された。怯む鬼たちを嘲るようにその手でひょいと払う仕草をする。
すると炎壁がどんどん広がって、群がってきていた鬼たちを一瞬で全員吹き飛ばしてしまった。
圧倒的過ぎる。
「あいつらはちょっとくらい火傷した方がいい」
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