一.蒙霧升降

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 猫耳や尻尾がついてて可愛いのは女のコの場合だろう。孫悟空が可愛いとは思えない。  可愛いかどうかは別として、あれは高度な化け方なのかと飲み込む。 「満月の晩は妖力が高まって、自分でも気付かないうちに毛深くなったり、犬歯が鋭くなったりするけども、基本はこの姿が楽なんだよね」 「へぇ。それは気付かなかったな」  長年一緒に暮らしているが、そんな微妙な変化が起きていたとは。ガキの頃喧嘩して噛みつかれたことはあるが、大した怪我をした記憶はない。  海老フライに自家製タルタルソースをつけてかじる。咀嚼しながら、狼って肉食だよなぁと、ポテトフライをうまそうに頬張る春海をみやる。 「それで? 今日襲われたワケは知ってんの?」  うん、と頷く。 「お前が生まれた時十二人の妖が贈り物をくれたんだ」 「何かその話どこかで聞いたな……」  決して自分に向けての話ではないが、聞き覚えがあるようなないような。 「十一人目の妖が贈り物をした直後に十三人目の妖が現れて、"彼は二十歳で死ぬ"という呪いをかけやがったんだ。慌ててそいつを抹殺したオレたちに、まだ贈り物をしていなかった十二人目の妖が冷静に修正にかかった。だけど、その呪いは強くて"二十歳になったら深い眠りにつく"というものにしか変えられなかった」     
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