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ふんと鼻息混じりにゾクッとするような声で言ってのける。
嬉しさに思わず顔が綻んだことに、自分でわかってそれを慌てて引っ込めてから、そんな変な行動することに自嘲する。
「そうだろ、春海」
同意を求めてきたセツに、噛み付くように非難する。
「な、なんで戻ってきたんだよ」
折角人が断腸の思いで帰したのに……。それを悟られたくないとムキになる。
「春海に強制送還されなくたって、オレは人間の世界で暮らすよ。だけどさ、オレはこんなナリにもなれるんだよな。だからこっちにクソ生意気な異母妹に逢いに来てもいいだろうし、引き籠もりの父を怒鳴りに来たって構わないはずだろ」
ああ、そうか……。
「もしお前がこっちに戻って暮らすっていうなら、止めはしないよ」
セツの表情は穏やかだ。
「でもさ、狼男のお前は人間でいたいんじゃないか? でなきゃ、あんな子守唄歌わないだろ? だったら、一緒に帰ろう」
そうか、彼の考えがオレに読めるように、彼にはオレの想いなんて全部お見通しなんだ。
狼男は自分は人間だと思ってる。いいや、違う。
どんなに人間が愛しくあっても妖の誇りを忘れてはいけないと、古から我ら狼男の先駆者であるジジたちから教わってきた。
我らは妖で、彼らは人間なのだと……。
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