八.菜虫化蝶

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 ふんと鼻息混じりにゾクッとするような声で言ってのける。  嬉しさに思わず顔が綻んだことに、自分でわかってそれを慌てて引っ込めてから、そんな変な行動することに自嘲する。 「そうだろ、春海」  同意を求めてきたセツに、噛み付くように非難する。 「な、なんで戻ってきたんだよ」  折角人が断腸の思いで帰したのに……。それを悟られたくないとムキになる。 「春海に強制送還されなくたって、オレは人間の世界で暮らすよ。だけどさ、オレはこんなナリにもなれるんだよな。だからこっちにクソ生意気な異母妹に逢いに来てもいいだろうし、引き籠もりの父を怒鳴りに来たって構わないはずだろ」  ああ、そうか……。 「もしお前がこっちに戻って暮らすっていうなら、止めはしないよ」  セツの表情は穏やかだ。 「でもさ、狼男のお前は人間でいたいんじゃないか? でなきゃ、あんな子守唄歌わないだろ? だったら、一緒に帰ろう」  そうか、彼の考えがオレに読めるように、彼にはオレの想いなんて全部お見通しなんだ。  狼男は自分は人間だと思ってる。いいや、違う。  どんなに人間が愛しくあっても妖の誇りを忘れてはいけないと、古から我ら狼男の先駆者であるジジたちから教わってきた。  我らは妖で、彼らは人間なのだと……。     
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