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それでも、暦と出逢ってどうしようもなく惹かれた。
セツが生まれて少しの間でも人間界で暮らせることが心から嬉しかった。
セツと暮らしていくうちに、どんどん離れ難くなっていった。望んではいけないことまで望む程……。
オレは人間と共に在りたいと、ずっと、ずっと願っていたんだ。
彼が伸ばした手を取ると、ぐんと引っ張られて宙に浮く。いつのまにかこんなに力強くなっていたんだな。
「さっき家帰ったらまだみんな帰ってきてなかったんだよな。儀鳳のとこ行ってみるか?」
「白髪のままであることを願って」
「オレは別人格も見てみたいな」
「セツくん、狐をなめちゃあいけないよ」
「そうか? なんかあそこにいたら突然稲荷ずしが食べたくなったんだよなぁ」
「ああ、なんかわかる。オレはね、きつねうどん食べたい」
「だろ? なんなんだろうな」
こうやってずっと笑い合っていたい。
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