エピローグ

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 ひょいとお菓子に伸ばされた手に、あれと思う。その手を目で辿る前に今まで居なかった者の声が耳に入る。 「ふーん、そんなことになってんだ」 「わ!」  春海も気配に気付いておらず声を上げる。  突然の来訪者は、腰まである長い白髪と端正な顔立ちの九尾の狐の彼だ。 「儀鳳、いつの間に」 「何しに来やがった狐野郎!」  勝手にお菓子をつまみ喰いしながら、まぁまぁと宥めるように手をヒラヒラさせる。 「そう吠えるな。狐の一族は妖界から離れて久しいからな。こうやって他の人間界に来てる妖から情報を得てるのさ」 「そんな情報集めて何するつもりだよ」 「さぁ? それは教えられないな。オレは情報交換に来たわけじゃないからな」  儀鳳には妖界に行く時に世話になったし、実は帰って来た時にも一悶着あった。  春海に強制的に家に戻された時誰も居なかったので、春海を連れ戻す時にはもしやと思いつつ儀鳳の処に行くと、彼に清明や丙が幻影や狐火によって遊ばれていたのだ。  別人格の黒髪の方ではなかったのだが、やっぱり性格は悪いようである。 「どうした鬼の子よ、そんなに見つめて。オレがタイプか? お前なら相手にしてやらないでもないが」 「いやいや、そうじゃなくて」  彼のお戯れには参る。春海がガルルルと狼の如く唸っている。     
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