一.蒙霧升降

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「眠り姫かよ!」  ハッと思い出してツッコミを入れるが、春海は真剣に語るのをやめない。 「うん、オレもあとでその物語を知ってね。眠りについたお前を起こす方法に気付いたんだよ」 「まさかだよな?」 「そのまさかさ。王子のキスで目覚めっぶふっ……」  赤飯用のごま塩を振りかけてやる。  最後まで言わせて堪るものか! 「……てめぇが一生の眠りにつけ!」  やってから、しまったと思う。テーブルの上がごま塩だらけだ。 「うん、まぁ、冗談はさておいて」 「どこまでが冗談だかわかんねぇよ」  苦笑しつつ二人でごま塩をかき集める。春海の前髪にごまがくっついたままだが黙っておこう。 「お前の生まれる時に十二の妖が集ったのは本当だし、十三人目の妖が邪魔しに来たのも本当。でもそこでお前に呪いをかけにきたんじゃなくて、殺しにきたんだ」  生まれる前の話であるが、あまり気分のいい話ではないな。 「『こいつは世界に破滅をもたらす。成人する前に殺さなければならない。』ってな。当然そいつは十二人に一瞬で消されたけど、それははじまりに過ぎなかった」  消されたって……、正当防衛ってやつだよな。妖の世界の法律ってどうなんだろう?     
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