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半分妖の身で妖たちと暮らしながら祓師の丙に祓いの修行を頼んだり、ネクロマンサーと知りながらオレに人生相談してきたり、全くもって不思議なやつだ。
丙も、セツには身内の恥でもなんでも話す気になれたんだろう。
「オレがお前くらいの頃の話だからな。今じゃあもう初歩的なことしか出来ないよ」
「そうなの? なんだ、教えてもらおうと思ったのに」
放課後に丙の修行を受けながら、さらに貪欲にも祓いの技を学びたいのか、こいつは。呆れを通り越して尊敬するわ。
なにやら彼が生まれた時に死んでしまった母親が、祓師だったらしい。どうせ妖半分人間半分なら、妖でもありながら祓師でもありたい、ということのようだ。
「低級霊を使った退魔法なら教えてやるぞ」
「んー死霊の扱いもちょっと気になるけどさ、今は祓いの方でいっぱいいっぱい」
そう言うとわかっていた。彼は亡き祖父母や母親の手前、霊を遣うということに抵抗があるようだった。
オレ自身も本気で教える気はない。
「おっとチャイムだ」
午後の授業の五分前を報せるチャイムが鳴る。
「じゃね、先生!」
セツがフルーツをふんだんに入れたヨーグルトを口にかき込むと、慌ただしく保健室を出て行った。
いつもはもっと余裕があるのに、今日はギリギリだったな。
テーブルの上を片付け、午前中にやっていた事務仕事の続きに取り掛かる。
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