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「んーん、仕事でやってるわけじゃないみたい」
仕事じゃないとすれば趣味で、と二重に驚いた。そんな既得な奴がいるのかと。
「どこで修行を積んだのかわからないけど、物凄い妖力でね、同い年くらいなのに凄いなって」
「へぇー」
小雪は素直に人を褒める子だった。すごいすごい私もそうなりたい、と言うのが口癖のようだった。そして、彼女は口だけじゃなく、言っただけきちんと努力していた。
「清明ももっと励めばいいのに」
「でもなー」
オレの方は逆に、その才能やら立場やら境遇やらを妬んでしまい、努力することを拒みはじめていた。
「どうせうちは六白兄さんが継ぐからなぁ。今から頑張っても……」
オレには五つ上の兄がいた。五年後に生まれたことに卑屈になるくらい自分は弱かった。
技術や負けん気は兄に劣らないつもりだが、史学が不得手で、どう頑張っても賢い兄に敵う気がしなかったのだ。
「またそんなこと言ってー」
「わかってるけどさ」
成長していくうちに、絶対に追い付かない五年の歳月に気付いてしまい、どうにもやる気が出なくなっていた。
「そんなんじゃ……」
小雪がなにか言い掛けてやめた。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
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