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心音が高鳴り、視界がすごく狭くなる。呼吸がうまく出来ていないのか頭がぼーっとしてるみたいで、動きが緩慢になる。
進んじゃダメだ。
知りたくない。
知りたくない。
知ってしまったら、きっと、すべてが終わってしまう。
誰かが頭の中のずっと遠くの方でそう叫んでたが、それでも足が止まらなかった。
居間のドアを開ける。
空気がまるで凍ったように冷たくて呼吸が止まる。
そこに、真っ白な顔した小雪が布団で寝ていた。
「小雪?」
彼女は人形のように動かない。
おばさんが言葉にならない声で泣き叫ぶ。
全身から力が抜け、フローリングに膝をつく。そのまま重力に負けるように地面に沈み込む感覚。歪む視界の中には木目しかなかった。
「っうあぁぁ…………」
雪夜のような耳が痛いほどの静寂だ。
詫びに来た母さんと六白兄さんの共に付いて来た家の者によって、オレは家に連れ返された。
小雪から離れたくないと彼女の手を掴んだが、びっくりして自分から離してしまった。以前心臓が破裂するくらいドキドキさせた彼女のやわらかくあたたかな手は、真っ白で硬く心臓が止まるくらい冷たかった。
私は死んだの、その現実を彼女自身から突き付けられたようだった。
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