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彼女の真意が理解出来なくなってしまったままのさよならは、あまりにも酷過ぎる。信じてやりたい。でも、それを確信づける彼女の笑顔はもうみることは叶わないんだ。
もう一度、もう一度だけ、彼女と話すことが出来ないんだろうか。
そう、幽霊でもいいんだ。
幽霊?
思い返せば、怨霊以外の霊体もいくつか見たことがあった。祓う程の力を持ったものじゃなかったが、浮遊霊って呼ばれる奴だよなと思ったんだ。
頭が漸く動き出した気がしていた。
そういえば史学を勉強している時、秘術の中に”死者の黄泉還り”という文字があった。
その時はさらっと読み飛ばしたが、もしかしたら彷徨う霊魂を喚び寄せて、肉体に戻すことが出来れば蘇るんじゃないか?
元々繋がっていたもの同士、寄せれば惹き合うはずだ。
秘術を記した術書は母さんの部屋にある。暫くは小雪の家から帰ってこないだろうから今がチャンスだ。
母さんの部屋に侵入し、目ぼしい場所を漁る。葉を隠すなら森の中の如く、本棚の二段目に違う背表紙を被せて入っていた。実をいうとそこは自分が子供の時から変わっていなかった。術書を盗み出し、自室に戻って該当の術を探す。
やはり、反魂の儀と記されたものがあった。
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