一.蒙霧升降

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「世界に破滅をもたらすって、なんでオレが?」 「妖と人間の間にできた子は、どちらの世界をも揺らがすと言われているんだ。伝説みたいな話だけど、妖は寿命が長い長い。生き証人がいて、何百年前に起こった大戦争は禁忌の子のせいらしいと話すんだよ」 「らしいって、生きていたにしてはよく分かってないんだな」 「まぁそんな噂のようなものでも信じる奴は信じる」  今日襲ってきた連中もそうなのだろうか。 「鬼の規律を守るっていう団体があるんだけど、それに君は何度も命を狙われているんだよね。現に、六年前の事故だって、妖たちの仕業だからね」  六年前の事故といえば、祖父母が死んだ転落事故のことだ。 「君も運良く生き残ったなんて思ってないだろう?」 「……」  自分が普通のモノではないことは、どこかで気付いてはいたかもしれない。  そう、あの時、崖から転落しぐちゃぐちゃになった車体の中から、レスキュー隊によって助け出された自分は、奇跡的にも無傷だった。隙間に滑り込んだのだろうと解釈されるには、かなり無理な状況だったが、唯一の保護者である祖父母を失った少年に対し、疑問視する者はいなかった。     
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