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読んでみると、術はそれほど難しいものではない。骨からの反魂も記載があったが、術書が書かれた昔と違い現在は火葬のため恐らく骨の質が違うだろう。肉体があるうちにやらねばならない。
機会は寝ずの番しかない。
もう彼女の蘇りしか頭になかった。兎に角誰にも邪魔されないよう平然と装い、巧く立ち回って、寝ずの番を任してもらうことに成功した。
みなが寝静まる頃に儀式の準備をはじめる。お香を焚き、清酒で彼女の身体を清める。
そして反魂の真言を唱える。
『散る花を 惜しむ心や とどまりて また来ん春の たねになるべき』
それを幾度となく繰り返す。
彼女の身体がビクッと動く。
成功か!?
「こゆき……?」
呼び掛けに反応したかのようにまた動く。
だが、小雪が蘇った、と思ったのはほんの一瞬で、すぐに異変に気付いた。
ビクッビクッと痙攣し、言葉にならない言葉を発しはじめる。
背筋にゾッとしたものが走る。
「違う……! 小雪じゃない!」
違うものが小雪の中に入ってしまったんだ。
身体をのそりと起き上がり出すが、手や足の使い方を知らないかのように頭や手首を重心にしていた。
気持ち悪い。
か、還す方法……。普通の祓いでいいのか!? いや、それだと彼女の身体はどうなる? 中身だけ祓うなんて知らない!
混乱するオレを嘲るようにケタケタと笑ってやがる。
「小雪から出ろよっ!!」
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