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清酒をぶっ掛けてやるが、変わらず奇声を発している。
この部屋から逃げ出しでもしたら堪らない。
早く祓わなければ、小雪の肉体も持たない!
その時、襖がバッと開き、六白兄さんが現れた。
惨状をみてオレに向かって怒鳴る。
「お前なにやったんだ!」
答えられるようなことをしていないし、小雪に入った何者かから目を離すわけにはいかない。
兄さんが中に入って後ろ手に襖を閉める。
『よしや君 昔の玉の床とてもかからむ後は 何かはせむ!!』
それは今の武中家では六白兄さんしか使えない強力な鎮魂の真言だった。
小雪の中のやつがギャアと声をあげ仰け反る。苦しみながら手足をバタつかせ、次第に動かなくなった。
祓えたんだ。
小雪の手足が変な方向に曲がり、表情も苦痛に歪んでいる。
そこで漸く、自分はなんてことをしてしまったんだ、と思う。
「清明! お前なにを」
腰が抜けて身体がガタガタ震え出す。手で抑えた口から嗚咽が漏れる。
オレは答えられなかったが、周囲に散らばった物をみて察したのか兄さんは驚愕した。
「まさか! 反魂の儀!?」
身体は正直にもビクッと答えた。
兄さんが左手で頭を抱える。
「なんて馬鹿なことを」
「こ、小雪と話をしたかっただけなんだっ」
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