Extra edition 追憶の死霊遣い《ネクロマンサー》

14/17
前へ
/243ページ
次へ
 すでに無いものを喚び出そうとしていたのだ。無いものがあるようになるわけがなく、祓う者が生み出せることはない。 「なんのための力だ」  なんにも出来ない両手を見る。なんて無力な手だ。 「なんのための力だよ……」  空っぽの手を床に叩きつけてやる。  もう、なにもない。オレにはもうなにもないよ、小雪。  ぐちゃぐちゃになって泣いた。  その後、秘術を用いたとして武中家当主より勘当を言い渡され、家を出る事になった。もう二度と武中家の敷居は跨がないと誓いを立てた。祓いももう行わない。  無力さを知った自分も、これ以上続けていける気はしなかったので未練はなかった。小雪がいない今、励みも労いもないから、祓いになにも見出せない。  荷物をまとめ終え家を出て行くその日、六白兄さんに呼び止められた。  感情というものを失ったようなオレの様子に、兄さんの眉が下がる。六白兄さんとは仲が良くも悪くもなかったが、家を出て行かざるを得なくなった弟を不憫にでも思ってるのだろう。きっと今後のことを言われるのだろうが、心ここにあらずな状態の今何を言われて頭に残らないだろう。 「小雪は、好きなのは清明だとオレに、はっきり言ったよ」 「え?」  小雪の話をされるとは思っていなかったのですぐには理解出来無い。     
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加