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「ただ、親の手前、すぐに蹴ることは出来ない。だから祓いの気が合わないことを理由にこの話を流そうと、今回の祓いに向かったんだ」
そう、だったんだ……。
兄との婚約話が出た時に、不出来な弟と結婚したいとはなかなか言い出しづらかったのだろう。
「護れなかった……。すまない」
頭を下げられる。
「兄さんのせいじゃない……」
兄さんには勝てないと怠けて、小雪の将来に自信を持たせてやれなかったのは自分だ。
ずっと一緒にいたいと思っていたなら、その場に留まっていてはいけなかった。一緒に先を目指さなくてはいけなかった。
「オレのせいだ……」
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「あれ、先生まだいたんだ」
保健室の扉がガラリと開かれて、声が掛かる。
とっくに下校時間が過ぎているというのに、セツが保健室に訪れた。
「部活やってる生徒がいるからな」
「あ、そっか」
「お前こそまだ帰ってなかったのか、帰宅部?」
「丙に外周走らされてんだよ、部活となんら変わりねぇや」
言われてみれば少し身体が引き締まってきたような気がする。
祓いに体力がそんなに必要だったかな。
どうしてこんな時間に来たのかと思うと、彼はなにかをキョロキョロと探している。
「忘れ物したから取りに来たんだけどさ。あった、これこれ、弁当箱」
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