セカンド プロローグ

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 十六歳の誕生日、自分に封印されていた妖力が覚醒し、鬼として目覚めた。  額からは角が生え、飢えた牙と伸びた爪が疼き、背中には黒い翼まで生えてしまった。  同時に知った妖という異種なる存在。普通の人には見えなかったり、密かに人に紛れて共存していたりする。  人と鬼の半妖である自分は世界を揺るがしてしまう危険な存在だとして、妖から生まれながらに命を狙われていたりする。  恐らく今追って来ている何者かもそういった類の妖だろう。  世界を揺るがすだかなんだかわからないが、そんなはっきりしない理由でおいそれと殺されてたまるか。  校舎の陰に回り込んだところで、自分が通り過ぎたところに強い風が走り抜けた。  ガウッという唸り声とともに追って来た妖が吹っ飛ぶ。  大きな金色の狼が飛び込んでぶち当たってきたのだ。 「春海!」  その狼がぶるっと震えて制服を着た男の姿に変わり、オレをみてニッと爽やかに笑う。  春海は幼馴染みで、幼い頃からオレを密かに護ってきた狼男だ。 「お前、授業は?」  彼は妖界でオレの母と出逢い、オレを人間の世界に連れて来た。妖力を封印した張本人でもあるが、今は一学年上の高校二年生。 「化学室からちらっとセツが見えてさ。あの二塁打はビデオに収めとくべきだったよな!」     
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