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「……ありがたいけどさ。いつもながらオレばっか見てんなよ、実験に集中しろ」
こいつの過保護は今に始まったわけではないが、思わず溜息が漏れる。
「まぁそう言わずにさ。ほら、奴がまた向かってくるよ」
春海に吹っ飛ばされた妖がキョロキョロとオレを探しているような動きをしている。
「くっそ、諦めの悪い! ここは逃げるぞ」
「えぇー! 戦った方が早くね?」
「ここをどこだと思ってんだ、お前は!」
今まで何度か襲われその度に追い払ってきたが、流石に学校で戦うわけにはいかない。
しかしなんで追われなきゃならないんだ、鬼ごっこって普通は逆だろ。
「学校の外に連れて行くか?」
「うーん、どうするかっわっ」
足がもつれたのか転けそうになる。身体が前に傾き立て直せない。
ヤバいっ!
「セツ!」
春海が慌てて受け止めようとするが少し距離がある。隙をついて妖がグンと近づいたのが背中から気配でわかった。
その時、妖の眼前に光る刀刃が突き刺さった。
「うおっ!」
オレは思いっきり前にペタンとすっ転ぶ。
うつ伏せの状態でチラッと後ろを見ると、足になにかが絡まっている。このせいで転んだんだ。妖の一部だろう。
そう、いまや一部となっている。なぜなら。
「お前はまた面倒ごとに巻き込まれてるのか」
「丙、助かったよ」
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