一.蒙霧升降

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「あの時は君を助けるのにも精一杯な状況でね。おじいさんたちは残念だったけど、薄々君の正体に気付いていたようだったからよかったよ」  そこで、残酷だな、と思ってしまうのは、やはり半分人間だからだろうか。  それを見抜いたのか、春海は複雑な顔をした。 「いい人たちだったけど、妖とは全く縁がなかったから、きっと君のあの姿をみたらどうなっていたかね」  考え方は古い人だったから、妖怪とかは信じていたかもしれない。もしあの場に居合わせていたら腰を抜かしていたことだろう。 「……お前のじいちゃんは、人間なのか?」 「じいちゃんも狼男だよ。本当の祖父にあたる人ではないんだけど、ずっと人間界で暮らしてる仲介者でね。君のことをサポートしてるひとりだよ」  あのじいちゃんもそうだったのか。全然気が付かなかった。 「狼男は人間界で暮らして長いからな、そういう調整も効くわけ。ひとつ上の学年にしたのは、一足先に学校を掌握する目的と、ずっと一緒にいるのもお前の為にならないからな」 「学校を掌握って、お前なにしたんだよ……」  ジトっとした目付きをしてやると、焦ったように笑った。 「あ、ヤダなぁ。人間にはなんにもしてないって。妖はみんなプライド高いから、自分たちよりも劣ってる人間には害を与えないよ」     
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